2014.12.05

KDDI エンタープライズアジャイルの取組み~やってみてわかった大切なこと

川上です。今回はKDDI Business IDの開発にご協力頂いたグロースエクスパートナーズ社の執行役員、日本Java ユーザグループ会長である鈴木雄介さんと、エンタープライズでのアジャイル開発の動向や、アジャイル開発に対する姿勢などについて議論した内容を掲載させて頂きたいと思います。

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KDDIがアジャイル開発を始めるにあたって

川上:KDDI Business IDの開発を始めるにあたって、グロースエクスパートナーズ社にご協力いただきながら、内製でアジャイル開発を進めていきたい、という事をご相談させて頂きました。その当時の事は覚えていらっしゃいますか。我々は開発メンバー全員でアジャイル開発をスタートさせたいのに対し、鈴木さんは、厳選されたメンバーでの開発をご提案いただきましたよね。

鈴木氏:スケジュールもタイトな案件だったため、少数精鋭での開発をと提案しました。「アジャイル開発というプラクティスをやりたい!」という発想は、失敗しがちなので正直心配していたんですよね。「それでも、アジャイル開発でやる!」という上から下まで、すごい覚悟を感じたので、それであれば応援しましょう、となりましたよね。最終的に、複数の部門を巻き込んだ大規模な開発をよくぞやり遂げました、という印象です。本当にお疲れ様でした。

川上:我々は、今までの開発手法ではうまく行かない部分を、なんとか打破したいという想いが強かったですからね。どう体制を組めば良いのか、どのようなメンバーが必要か、我々の想いを実現するために、プロジェクト前に十分な議論が出来た事が良かったと感じています。

アジャイル開発を「開発手法」と思うと上手くいかない

川上:世の中全体の傾向としてはどうですか?内製化、アジャイル開発への関心は高まってきているのでしょうか?

図5

鈴木氏:アジャイル開発という観点よりも、主業を高価値にするためにITサービスを自ら運営していく必要性が高まってきていると思っています。製造業であれば、モノに付随するサービスを提供するなどです。バックエンドの仕組みであれば、仕様に従ってプロジェクトを遂行し、ソフトウェアをリリースすることで済んでいたのが、サービスを継続して運営していくとなると期限と仕様書だけでは、継続した運営がうまくいかなくなってきている。運用者や他部門のフィードバックを元に継続して開発し続けるスタイルが必要となってくるので、内製化、アジャイル開発という流れに自然と向かうのだと思います。

多くの企業が「既存のやり方では上手くいかないが、どうしたらよいか」という悩みを抱えていらっしゃいます。大企業は、企画、業務、運用、開発と複数の調整すべき部門があり、開発だけアジャイルになっても意味がないんですよね。どうやって色んな部門で起きた問題を解決できるか、ということが課題となっています。

川上:開発スタイルだけではなく、ビジネスのプロセス自体を見直さないといけないということですよね。アジャイル開発は、「開発」と名がついていることから、開発部門が変わらなければと開始当初は考えていましたが、プロジェクトを進める中で、ビジネスプロセス全体を見直すべきことなのだと実感しました。

「アジャイル開発」と「エンタープライズアジャイル」は違う

川上:コンシューマー向けのアジャイル開発と、エンタープライズアジャイルでもまた大きく違いますね。

鈴木氏:そうですね。WEBサービス系では、週に何回もリリースすることもありますが、エンタープライズアジャイルでは、それほど頻繁にリリースされたのでは業務部門、運用部門がついていけず、困ってしまいます。エンタープライズアジャイルに必要なのは、開発を早くするというよりも、その企業のリズムを把握し、どう刻むかです。会社によってリズムは異なりますからね。大規模なリリースであれば、3~4ヶ月に1度のリリースが丁度良いとは思います。我々のお客様で、3ヶ月に一度のタイミングでリリースされているお客様がいらっしゃいますが、

  • 営業がお客様にサービスを紹介する
  • お客様にサービスをご利用いただく
  • フィードバックをもらう

というプロセスを踏むのに、どんなに早くても3ヶ月はかかるそうです。3ヶ月おきにリリースすると、そのタイミングでお客様の所へ行くことが出来、営業機会を創出できるというサイクルです。

川上:定期的にリリースしていくというのは大事ですね。KDDI Business IDにおいても、定期的に機能改善や新機能のリリースを行っています。定期的に実施することで、運用部門や企画部門との調整タイミングもリズムが刻めるようになってきました。

KDDI Business ID 開発の成功要因とは

図6

川上:企業がアジャイル開発を始めるにあたって、必要なこととはどのような事だと思いますか。

鈴木氏:アジャイル開発は手法が注目されていて、プラクティスが大事だと言われますが、本当に大事なのは、エンジニアと企画担当がどう情報を透明に共有するかということだと思っています。ソフトウェア開発にはリスクがたくさんあるので、企画側の意向、エンジニアの不安やリスクを透明に伝えてお互いに信じる、信じてもらう努力が必要です。POCをプロトタイプにするのも大事な取り組みであり、仕様書に書いていない、信頼関係をどう築くかが成功を左右すると思います。

川上:KDDIがBusiness IDの開発に際して苦労がありながらも、良いサービスがリリースできたのは、おっしゃられた信頼関係は強かったと思います。

鈴木氏:そうですね。マネージャー陣を始めとして、「エンジニアは信頼すれば、しっかり期待に応えてくれるんだ」という信念がありましたよね。そこを、中間マネジメントも現場レベルのマネジメントの方も継承して受け継いていた。そこがうまく行った理由の一つだと思います。アジャイルをやりたいと言い出した人に対して、一人でも上手く行かないんじゃないかと、信じていない人がいると上手くいかないものです。何としてもアジャイル開発でリリースするんだという決意が皆にみなぎっていましたからね。

川上:ソフトウェア開発は一人では出来ないという信念はもっていましたね。メンバーが気持ちよく仕事に集中している時が最大のアウトプットがでるので、その環境を作るために自身のポジションでもあるスクラムマスターが必要なんだと思っています。開発メンバーが如何に開発に集中できる環境を作るかは、私が特に腐心した点でもあります。

これからの企業の開発に期待すること

川上:これからの企業の開発環境はどのように変わっていくべきと考えていますか。

鈴木氏:日本のエンジニアはまだまだ子供だと思うんですね。ビジネスという言葉を安易に使いすぎている。例えば、通信インフラを預かっているのであれば、絶対にサービスを止められないという信念を持って、開発に臨んで欲しい。その意識があれば、安易にバグを生む事はないと思うんです。エンジニアは今、大事にされすぎているのでビジネス全体の流れや責任を理解し、ビジネスマンとしてのエンジニアがもっと育って欲しいと思いますね。

川上:自身が開発したものが、各部門でどう運用されているのかを実際に見ることが出来るのも内製、アジャイル開発ならではのメリットかと思います。KDDI Business IDの開発メンバーもリリース作業の現場に立ち会うなどして、ビジネスプロセス全体の理解向上に努めています。システム領域が今後も広がるので、一人で全てをわかる人はいなくなってくる。だからこそ、それぞれの部門の立場を理解し、信頼関係を築き、お互いに意見を出し合って、いいものを作っていく関係が大事ですね。本日はお忙しいところお時間いただきありがとうございました。

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引越しされたばかりのオフィスに伺いました。

鈴木雄介さんプロフィール
グロースエクスパートナーズ株式会社 執行役員 /日本Javaユーザグループ 会長 / 日本Springユーザー会幹事。百貨店のシステム子企業で開発/運用/保守に携わった後、ネットサービスや企業システムのアーキテクト・PMとして活動。2008年より現職。「拡張する空間建築家とITアーキテクトがつくるもの」共著。「ソフトウェアアーキテクトが知るべき97のこと」監修。

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KDDI株式会社 プラットフォーム開発本部
アジャイル開発センター

川上 誠司

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