2015.06.09

KDDIアジャイル ~KDDIとパートナー企業が一丸となる関係づくり~

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KDDI Business IDプロジェクトリーダーの川上です。KDDI Business ID(以下、KBI)は内製によるアジャイル開発にて行ったというお話は以前にこのブログでもお話していますが、開発パートナーとして、株式会社アットウェア、グロースエクスパートナーズ株式会社の2社にご協力頂き、実際の開発部分をKDDIメンバーと共に支えてもらっています。パートナー企業を1社にせず、2社とマルチベンダーにこだわり開発チームのメンバーを募集させていただいたのは、SIerにより得意分野が異なり、それぞれの分野のプロフェッショナルが集結し、強みを発揮できればよりクオリティの高いサービス開発が可能と考えたからです。但し、それぞれが異なる文化や業務経験を持ち、今までは全く別の場所で働いていたメンバーが集まって今日から仕事をはじめても、最大の成果を出そうとしても、それは容易なことではありません。発注側、受注側のそれぞれが歩み寄り、工夫し、同じ目標に向かって結果を出していくまでの道のりについて、今回はKBIの開発にご協力頂いた株式会社アットウェア 福社長である北野 弘治さんと対談した内容を掲載したいと思います。

まずは、アイスブレイクから。パートナーシップを築くための試み

2川上: Agile Japan2015を大盛況のうちに終え、世の中のアジャイル開発への関心の高さを再認識していますが、今回は、アジャイル開発に携わるユーザ企業とパートナー企業の関係づくりという点にフォーカスして議論していきたいと思います。KBIの開発に2社のマルチベンダーへ協力をお願いしましたが、マルチベンダーであることもあり関係づくり等の不安はありましたか?

北野氏: KDDIの皆さんがよくアジャイル開発について勉強されていたので、最初は非常にやりやすいという印象を受けました。ただ、お互い知らない人だらけでどう付き合っていけば良いのかわからない、最初のステップは重要な部分で、アイスブレイクなどの時間を設けてメンバーと趣味や好きなものの話などをさせてもらいましたよね。そういった話に付き合ってくれたというのもあり、大丈夫だろうという気持ちになりました。ランチなどもご一緒にする機会も増え、3ヶ月くらい経ったところでチームとして成り立っていくという自信が出てきましたね。サービスリリース後の打ち上げでは、KDDIを中心としたパートナー企業などの皆が一丸となって喜び合っているところを目の当たりにし、自分自身も開発メンバーとして現場に入れなかったことを非常に寂しく思ったほどです。

川上:最初は、麻雀や自転車の話からしましたよね。打ち上げでは、リリースするまでの不安な思い等を共有し、乗り越えた喜びを皆が同じように感じていたと思います。スタート当初、コミュニケーションの重要性は、頭では意識してよくわかっていたつもりですし、だからこそ上手くやらなければならないという想いと、PO(プロダクトオーナー)として成果物を出さないという制限のある中で、狎れ合いにならない関係を模索していました。お互いに思いやりすぎると、意見が言いづらい事もでてきますからね。その匙加減は難しいなと思います。

北野氏:あとは、プロジェクト開始時にインセプションデッキを作る場を設け、「このプロジェクトは何を目指し、何を作ろうとしているのか」という共通理解をもつために、ゼロベースからの話し合いを行いましたね。アジャイルのいいところは、そういった考えや想いを関わっているメンバー全員の前でさらけ出して話し合い、相互の理解を深めていくことができることだとも思っています。

責任分界点を設けない、責任の全ては発注側であるKDDIが負う覚悟

北野氏:うまくいかない例を申し上げると、アジャイル開発のプロとしてプロセス提案を行い、メンバーとして一緒に開発をスタートさせるのですが、上手くいかなくなった時にプロセスのせいだと一方的に判断を下され、どうしてくれるんだと。経緯報告書や始末書というケースも稀に出てくる場合があります。我々としては、全てが弊社のメンバーではなく、お客様のメンバーも入ってくる中で開発方法のプロセスも一緒に改善していくという姿勢がないと非常に難しいなと感じています。

川上:責任分界点を設けてしまう時点で受発注の関係でチームに成りきれないですよね。我々は、一緒にやっていきたいという想いが強くマルチベンダーでやる、チームも会社ごとに作るのではなくミックスする、などをKDDI側で決めた時に全てのリスクはKDDIが負うという覚悟はありました。自分達で言い訳できない環境に持っていき、自分達で責任を持つ覚悟を決めました。

北野氏:我々も同じで、お客様のビジネスに対して、どうすれば作っているものが意味を成し結果として売れるのか?どうすれば利用者が使ってくれて喜んでくれるのか?という点に、無関心というスタンスではダメだと思うのです。むしろお客様のビジネスについて積極的に理解し、お互いがお互いの勝手口から入っていく歩みよりが大事ですね。会社を超えて不得意な点をカバーするという点も見られ、ユーザ企業中心として、マルチベンダーでこれだけうまくして回している事例をあまり見ないですよ。

KDDIメンバーもエンジニアとして配置することによる相乗効果

川上:マルチベンダーによる共同開発で上手く業務が回った理由として、開発のメンバーにエンジニアとしてKDDIメンバーが入っていたことも大きかったと思われますか?

北野氏:その影響は大きかったと思います。PO(プロダクトオーナー)だけで、エンジニアは別組織となってしまうとどうしても受発注の関係であり、ウォーターフォール的な開発になってしまいます。コードを書けるKDDIメンバーがエンジニアとしているからこそ、バリューが出せていない時期にも理解してもらえる点も多かったと思いますし、言葉で説明するとたわいもない、細かい内容であっても非常に難易度が高かったり、そういったことをPOに説明できる人がいることで、状況の理解が深まりスムーズに事が運んでいきますからね。

川上:KDDIメンバーもエンジニアとして配置されることで重要な技術についての理解が深まり、技術力が飛躍的に向上しました。お互いに得るものは大きかったと思います。アジャイル開発では、皆が同じ場にいて状況や雰囲気がわかるのもメリットだと思います。皆が必死に業務に取り組んでいて、もっと良くするためにはどうしたらよいかを夜中まで議論している人たちに対して、少しアウトプットが出ない時があったからといって、「なんでなんだ?」とは言えないですよね。現場が見えているというのは非常に大事なのだと思います。

北野氏:我々も自社で、お客様のオフィスから離れた場所での開発を行っているプロジェクトがありますが、お客様に弊社まで足を運んでもらってみてもらわないと現場が見られないので、問題は他にあったとしても、顔を合わせていない分、不安が蓄積するという問題はありますね。状況を説明したところで現場が見えないために理解されないということも場合によってはありました。現状として、その点については色々創意工夫をして、リモート開発でも同一ロケーションと変わらないアジャイル開発を進めていけるように改善し続けています。アジャイル開発の基本は、チームメンバが同じロケーションでやるというのはコミュニケーションの原理からしても当たり前ではあると思います。

 アジャイル最大のメリットは変化に対応できるスピード感

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北野氏:アジャイル開発でサービスを開発されて、何が一番良かったと感じていますか?

川上:圧倒的にスピードが違いますね。テスト、自動化の仕組み、リリースの工数など、全てを細かい単位でリリースできる分、失敗もなくリリースしやすくなります。好循環でスピードアップが図れ、最近の例では営業から要望があったものを2週間で開発しリリースできている。今までのウォーターフォール型の開発では、9か月前にエントリー、6か月前に仕様フィックス、半年後にリリースというようなリードタイムであり、市場の流れと合わない状況でした。9か月後に他社がどんな機能を出すかなんて誰も読めないですからね。今は、1ヶ月前に要望をいってくれれば何とかします、というスピード感に変わりました。

北野氏:できるだけ詰め込んでリリースするというスタイルが大企業としてまだまだ多い中、1サービスを徐々に成長させてという取組みは、大企業であるとなかなか見られないですよね。

能動的、自立的な開発者の育成

川上:我々KDDIでは、アジャイル開発の経験が豊富なアットウェアに開発プロセスを主にリードしていただき、メンバーの能動的、自立的な提案に助けられ、大きな成功要因となったと感じています。そのような人材育成の観点で、アットウェア社内で取り組まれているようなことはありますか?

北野氏:弊社では組織のあり方・組み方などを社員と役員全員で、どうしたら良く機能するのか?どうしたら能動的・自立的に動けるようになるのか?会社のビジョンだけではなく個人・チームが満足を得られる成果に結び付けられるのか?を頻繁に話し合っています。以前は、案件の全てを役員がマネジメントしていたため、メンバーへの権限委譲の範囲などの問題などがありメンバー自身で物事を決められないなど、当時は組織力としての限界を感じていました。そこで、問題を見直し、社員一人ひとりが伸び伸びと仕事ができ、組織を意識しながらリーダシップが取れる構造へと変化させるため、チームという組織構成を取ることを決めました。今では、チームは「自己組織」「権限委譲」などを進めていくための我々の組織としての要になっています。また組織というのは完成することは無いと思っています。常に時間と共に変化しますから、常に状況を共有し、問題を改善し、変化させていく。それらができる組織として、アットウェアの組織自体が柔軟であり続けなければならないと思っています。そういう環境がアットウェアにあること。それが、弊社メンバーの自立性をより高めていると信じています。

成功のためのチームづくり

川上:今後、アジャイル開発を始めようとする企業も多いかと思うのですが、何かアドバイスはありますか。

北野氏:ユーザ企業も開発企業も一緒になって取り組むという姿勢が一番重要かと思います。それがないとどちらかに負荷が偏ってしまう。お互いに「それはあなたたちが解決すべき問題でしょ」というスタンスでは最大のアウトプットがでないですよね。何かあった時の言い易さにも繋がる。契約書に書かれた事をやっていればいいのではなく、プロジェクトを成功するための組織を超えたチームの和を組むことが大事ですね。

川上:このチームの輪をキープしていきたいですね。今の感覚をナレッジとして代々として受け継いでいくようなものにしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

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今回KDDI Business IDの開発メンバーとして参加頂いた左からアットウェア矢納さん、荒木さん

◎北野 弘治さんプロフィール
株式会社アットウェア 取締役 “福”社長。社会をしあわせに導くという想いを込めて“福”をつけている。
1975年 福井県生まれ。アジャイルプロセス協議会 運営委員 見積契約WGリーダ。横浜Scala勉強会 共同主宰。
前職でアジャイル開発、XP、TDDを全国に普及する活動を経験。その後、フリーカメラマンを経て、再びIT関連で独立起業。
2008年より現職。

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KDDI株式会社 プラットフォーム開発本部
アジャイル開発センター

川上 誠司

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