2017.02.07

ジェフ・サザーランド博士による認定スクラムマスタートレーニングに参加して

scrum inc

KDDIでアジャイル開発を推進している荒本です。
前回、スクラムを考案したジェフ・サザーランド博士の率いるScrum inc.と共同で、日本におけるスクラムの教育プログラムを開始し、この2月に認定スクラムマスター(CSM)研修と認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)研修の開催についてご案内しました。
日本でのスクラム研修を開始するにあたり、米国で行われているScrum inc.の認定スクラムマスター研修に参加してきましたのでレポートします。

 

米国での参加者は大企業が中心

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

米国での参加者は、通信事業者、銀行などの金融系、軍需製品メーカ、教育機関など、ほぼ大企業に属し、職種は開発者が占めている訳ではなく、マネージャー職やプロダクトマネージャーなど幅広く、米国ではエンタープライズ系の大企業においても組織的にスクラムに取り組んでいる様子が伺えました。またスクラムは仕事のやり方を変える有効な手法として、複数の大手コンサルティング会社も参加していました。

 

本来スクラムは日本に受け入れられやすいもの

トレーニングでは、最初にスクラムの起源や、なぜ今スクラムによる仕事の進め方が必要か、から始まりました。デジタル産業革命が進む現在、仕事の生産性を高め製品の開発スピードを加速する必要性があり、従来のウォーターフォール開発に見られる、最後まで見通せない不確実な状態で作られた“計画”自体には価値はなく、“計画を作りながら進める”ことが全てである、としています。米国ではこのようなトレーニングの機会が多く得られる環境が整っていますが、念入りに計画を立てることを是とする日本のビジネスの現場では、アジャイル開発の普及が米国ほど進んでいないといわれています。特に、計画変更をネガティブとして捉えられる習慣のあるエンタープライズのマナジメント層に、このようなアジャイルトレーニングの機会を届ける必要性を感じました。

3
その後のトレーニングは、スクラムのプラクティスに準じたワークショップを通じて実践型で進められました。
スクラムは、1980年代に生産性の高い革新的な企業としてホンダ、キャノン、トヨタ、富士ゼロックスなどを分析した日本人経営学者の野中教授と竹内教授の論文、およびトヨタ生産方式から大きな影響を受けて考案されています。トレーニングの中ではスクラムに関わらず、従来から日本企業で多く実践されているプラクティスを学習するコンテンツもあり、日本は米国と比べて導入は遅れている現状ではあるものの、スクラムによる仕事の進め方は本来日本の企業文化に受け入れやすいものであると改めて感じました。また、特徴的なコンテンツを一つあげるとすると、スクラムのスケーリング(拡大)です。組織的にスクラムを適用していくためにスクラムチームを拡大していく必要がありますが、必要となる役割と組織体制について学びました。

 

スクラムの本質を理解する

トレーニング中に常に感じたことは、自分たちが実践しているスクラムは本当のスクラムなのであろうか、ということでした。スクラムは飛躍的に生産性を向上させ、加速し続けることを本質として考え出されたフレームワークです。スプリント、デイリースクラム、レトロスペクティブなどの一つ一つのプラクティスは、スクラムの本質を実現するために考え抜かれ、それぞれ生み出された目的や理由があります。

それぞれのプラクティスの本質的な意義や目的を理解することなく、形式的なイベントとしてただ実践しているのであれば、それはスクラムを“やっている”だけで、スクラムが本来求めている“成すべき姿”になっていないのではないか、自分たちがこれまで実践してきたスクラムは“名ばかりスクラム”になっていないか、について、スクラムの考案者本人からの話を聞くが故、深く考えさせられました。

仕事の生産性を一時点で向上させることではなく、“加速し続ける”すなわち生産性を高め続ける事こそがスクラムの本質だと思います。そのためには改善を継続的に繰り返すこと、生産性のスピード指標を計測し続けること、が欠かせません。スプリントのサイクルを回すだけが目的となったスクラムは本来のスクラムではないでしょう。この責任を持つのがスクラムマスターであり、重要な役割であると改めて考えさせられました。

Scrum inc.の特徴はそこにチームの幸福度を指標として加えている点です。チームの幸福度と生産性には相関関係があり、チームの幸福度が高いほど生産性が向上することを計測により証明しています。スクラムの本質とそれを実現するために生み出された一つ一つのプラクティスの意義を正しく理解し、正しく実践し、自然と思考や行動ができる状態を目指したい、このような状態になれば、ジェフ・サザーランド博士の著書タイトルである『The Art of Doing Twice the Work in Half the Time』(2倍の仕事を半分の時間で行う)の領域に達することができるのではないかと感じました。

 

参加される皆さまへ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

2月の研修はジェフ・サザーランド博士が来日して研修を担当する予定です。スクラム考案者から直接話を聞くことによりスクラムの本質に触れることができる得難い機会であり、参加予定の方は楽しみにして頂きたいと思います。米国で参加した研修では、ジェフが話している途中でさえ、遮ってでも質問するシーンが何回も見られ、多くを持ち帰りたいという熱意が伝わってきました。日本の研修においても、参加される皆さまにとって有益な時間にして頂きたいと思います。

 

カテゴリ
タグ

KDDI株式会社 ソリューション事業企画本部
クラウドサービス企画部

荒本 実

新着記事
タグ
アーカイブ
カテゴリー
Contact
TOP