2015.02.17

今後のエンタープライズ クラウドの方向性~キャリアクラウドの必要条件とは

クラウドサービス企画開発部 副部長の上田 茂広です。副部長として主に開発を推進しています。今回は、KDDI クラウドプラットフォームサービス(以下、KCPS)の立ち上げ当初からインフラの設計構築、運用サポートにご協力頂いたクリエーションライン株式会社の代表取締役社長である安田忠弘氏と「エンタープライズ市場のクラウド利用促進における課題」、「お客様のクラウドに対するニーズ、ご要望」について議論した内容を掲載します。

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クリエーションラインとKCPS、品質向上の取組み

上田:クリエーションラインの皆さんにもご尽力いただき、2月1日から無事にKCPS(Ver2.0)のリリースが出来ました。色々とご協力ありがとうございました。クリエーションラインとはKCPSの開発当初から技術的なパートナーとして苦楽を共にしてきましたが、KCPS(Ver2.0)(以下、KCPS)はこれまでのノウハウが生かされて、より品質にこだわったサービスに仕立てる事ができました。

安田氏:KCPSは、短期間で確実に品質の安定化が実現したことで、更にお客様のニーズに応える追加機能の提供が可能となりましたね。サーバーだけではなく、ストレージの2重故障も考慮した「エクストラアベイラビリティ」は特に、業界最高水準の安定稼働を目指したというところがKDDIらしいと思いますね。

上田:KDDIが提供するクラウドサービスですから、お客様からは通信品質と同等の安定性が求められていると思っています。そのため社内でも、品質管理の目は非常に厳しく取り組んでいます。毎週、関係者にはKCPSの稼働率、故障原因を細かく報告し、「故障経験から学び、改善する」その繰り返しです。おかげさまで、今まではクラウドへ移行する事を不安視されていた複数のお客さまが、エクストラアベイラビリティの採用とあわせKCPSへの移行を決めて頂いています。

安田氏:外部の私達から見ても、SVOC( KDDIサーバーオペレーションセンター)、CLOC( KDDIクラウドオペレーションセンター)などの品質向上を追求するレベルが非常に高いと感じます。故障原因となるものは、極小レベルまで払拭していく取組みを行っていますね。

上田:営業やSEなどお客様に接触する部門も当然ですが、高い品質を求めてきます。それだけ高い品質を求めているユーザーがいて、そこへ提供しているからこそできた成長なわけですね。運用、開発の地道な取り組みにより最近では、故障件数が激減しています。

安田氏:万が一の故障後の対応も、故障レポートを早急に提示するなど、KDDIならではの対応ですね。故障をそのままでは終わらせない文化がある。お客様へ提示する報告書、復旧支援を行うきめ細かな対応も日本企業ならではですよね。

上田:故障発生時には、30分以内にお客様へ通知を行う運用を実現し、復旧には、お客様からお預かりしているシステムを一緒に復旧するという姿勢で取り組んでいます。また重要な機器についてはメーカーの開発者へダイレクトにコンタクトできるパスを持っているのはもちろんの事、KCPS向けにかなり特別な保守体制でサポートを受けている製品もあります。

安田氏:規模が大きくなればなるほど、故障の可能性も、対応頻度も増えてくるわけですが、今のレベル感をどこまでキープできるのかは課題ではありますね。人が対応するにも限界が出てくるかと思いますが、自動化などを検討されているのですか?

上田:自動化は現在も部分的に取り入れてはいますが、必須ですね。品質向上の取組みと共に、運用コストを下げて、どこまで魅力的な価格で提供していくかもキャリアクラウドに必要な要素と認識しています。人頼みの運用では運用費が高くなり、低コストでの提供が難しくなってくる。100%の割合で故障を防ぐことは不可能なので、お客様にご迷惑のかからない範囲でどう復旧するか、スピード化も重視される中で自動化の設計を促進していかなければならないと感じています。故障パターンはいくつもシミュレーションを行い、想定できない故障は起きないよう、事前にあらゆる故障を念頭に対処しています。それを今後は、どうお客様へ「見える化」していくか、が課題となっています。

安田氏:ユーザーとしては、今、どのような故障がどのような原因で起きているのかを知るというのは気になるところですよね。障害を防ぐのはもちろん、適切な情報をいかに早く伝えるかとういことは重要ですね。また、運用監視を行っていく中で、ログが蓄積され、故障の予兆傾向が出てきます。それらを故障してから検知するのではなく、壊れそうなものを予見し、「見える化」していくなどの取組みもいいですね。

上田:予知まで出来るとベストですね。現在は、故障パターンを社内で可視化して、窓口対応などにも活かしています。運用の効率化が出来るとお客様の問合せに対して、よりきめ細やかな調査、提案もできるようになります。KCPSは一度導入されると、長期間に渡って使い続けて頂くサービスなので、継続して安心してお使い頂けるということは何より重要であり、キャリアに求められるクラウドであると思っています。

エンタープライズ企業のクラウド利用動向~求められる品質、安定性

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上田:クリエーションラインでは、最近のエンタープライズ企業のクラウドへのニーズはどう捉えていますか?

安田氏:企業のクラウドへの抵抗感は年々、無くなってきていると感じています。現在は、保守的な傾向のある企業でさえ、クラウドを前提として使うという姿勢になってきています。セキュリティや閉域網の条件を付加するなどは前提条件としてありますが、第一優先がクラウド、出来なければオンプレ、という時代の流れになってきていると思います。

上田:企業が選ばれるクラウドの条件で最も重要な条件は何だと思われますか?

安田氏:やはり最も重要なのが、「品質」と「安定性」ですね。障害を発生させないということはもちろんですが、ネットワーク遅延やストレージのパフォーマンス低下など、揺らぎが無いということも重要だと思います。

上田:信頼性については、KCPSの品質の安定化が実現したことで、現在は、お客様にどのように安心、安全を伝えていくかを検討しています。KDDI側がいくら安心、安全と言っても、「実際は使ってみないとわからない」、との声もお客様から頂いており、昨年末よりKCPSの稼働率を定期的に公開するなどの試みを行い、このブログもそうですが、社内でお客様に必要な情報はできるだけ多く、スピーディに公開していこうという試みを始めています。

安田氏:業界的には、KDDIが今後、SLAだけではなく実稼働率を公開していくという試みは衝撃でした。覚悟を決めて運用されていますよね。あとは、ネットワークとの融合がキーになってくるのではないですかね。「KDDI Wide Area Virtual Switch」(以下WVS)とプロビジョニングの一体化、WVSの通信コントロールも含めて見える化、管理できるというのは魅力であると思います。ネットワークの連携は意外と企業が出来ていない点であり、またKDDIの場合は、KCPSを利用すればネットワーク部分は無料となるので、価格メリットは非常に大きいと思います。ネットワークキャリアとしてのクラウド、ケアを継承していく必要がありますね。特に閉域網にこだわったユーザー企業は、一括して安定管理できるというのは魅力的であると思います。

クリエーションラインの先進性、技術力

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上田:クリエーションラインでは、常に国内外から新しい技術やサービスを採用していますが、どのように情報収集されていますか?

安田氏:まずは、アンテナの高い人を集めるというのは、一つの大きな要因であるとは思いますね。海外の最新動向をオンタイムで情報収集し、自分達が好きだから勉強する。また情報収集もネットだけではなく、コミュニティなどリアルな人との繋がりも重要です。クリエーションラインの担当がロスに在住しており、新しい技術や取引先など早い段階での情報収集が可能、というのも大きいと思います。

上田:海外エンジニアとの接触も多いかと思いますが、日本のエンジニアの技術力や製品はどう評価していますか?円安にもなってきているので、日本の製品を海外に売り込むというのも考えられると思うのですが。

安田氏:日本のエンジニア自体は優秀だと思いますね。但し、日本のエンジニアが利用する製品のほとんどが海外製というのが現状です。海外メディアは試験調達させる方法も含めて、マーケティングが上手いので、国内全体が海外製を採用する傾向は根強くあります。日本製の課題としては、シェアが伸びないとコストも下がらないため、国内だけを対象とするのではなく、海外で売ってシェアを伸ばしていくことですね。東南アジアなどは、日本製への品質に対する信頼が熱いですからね。まずは、アジアで実績を作っていく、という策もあるかと思います。

上田:確かに、逆輸入的にマーケティングを考えないと、日本からの売上拡散はしないかもしれませんね。日本のエンジニア自体は大差ないという印象ですか?

安田氏:エンジニアの技術力としては、優秀ではありますが、それが社会的な地位に結びついていないのは問題だと思っています。業界ではよく言われていることですが、日本と欧米でのエンジニアの地位には大きな格差があります。日本ではエンジニアは3K=きつい仕事だというイメージになってしまっていますが、欧米では成りたい職業の1位になることもあるくらいです。エンジニアを支える環境が大きく異なっていることが大きな要因だと思います。欧米では、エンジニアを中心にした先進的な技術、性能を前面に出しているベンチャー企業が成功している例が沢山ありますが、国内ではそのような例はまれです。技術、性能よりも実績を重視してしまうということも大きく影響していると思われます。

上田:確かに日本では、実績を評価する、実績で選ぶ文化はありますね。KCPS立ち上げ当初を思い返すと、クリエーションラインもKCPSも約2年で大きな成長を遂げましたよね。

安田氏:そうですね、弊社も技術力には自信を持っていますが、当初は大きな実績はありませんでした。KDDIは技術力を純粋に評価していただき当社を選んでいただきました。感謝の気持ちと共に素晴らしいことだと思いました。KDDIのような会社が日本でも増えてくることが、今後の日本のエンジニアのため、日本のIT業界のために必要ですし、それが国内でも優秀なエンジニアが増える環境になるということではないでしょうか。クリエーションラインとしても少しでもこれを前進させるためにKDDIと共にエンジニアが輝ける現場を一つでも創りだしていきたいと思っています。

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上田:今後も高品質なサービス提供のために、パートナーとして引き続き宜しくお願いいたします。本日はありがとうございました。

 

安田忠弘さんプロフィール
クリエーションライン株式会社 代表取締役/一般社団法人クラウド利用促進機構 理事/日本MSP協会発起人。
ソフトバンク関連会社でブローバンドビジネスの企画・マーケティングなどを経て、2006年にクリエーションラインを起業。
クラウドビジネス黎明期からCloudStack、OpenStackなどクラウド関連のオープンソースコミュニティを積極的に支援している。

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KDDI株式会社 プラットフォーム開発本部
アジャイル開発センター長

上田 茂広

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