2015.11.10

OpenStack Summit Tokyo 2015 参加レポート

クラウドサービス開発部 松本です。先日(2015/10/27~30)開催された、OpenStack Summit Tokyo 2015 に、クラウド基盤に関する新技術の調査、検討のため参加しましたので、以下にレポートします。

1.OpenStack Summit 概要

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OpenStack は、クラウド基盤を構築するためのソフトウェアで、オープンソースとして開発されています。その開発者、利用者、関連ベンダが一堂に会して、技術情報交換、導入事例発表、今後の開発方針の策定等を行うイベントとして、「OpenStack Summit」 が年2回開催されており、今回は初の東京での開催となりました。(Summitは北米/北米以外で交互に開催されており、次回2016春は米国/オースティン、次々回2016秋はスペイン/バルセロナの予定です。)今回、参加登録者は5,000名以上、かつ3分の2以上が海外からとのことで、非常に大規模かつ国際的なイベントとなっています。

2.OpenStack リリースサイクル

OpenStackは年2回メジャーリリースが行われ、各バージョンに対しアルファベット順に名前が付けられます。2015/4に11番目のバージョン「Kilo」がリリース済でしたが、今回2015/10に、12番目のバージョン「Liberty」がリリースされました。なお、2016/4リリース予定の次期バージョンの名称は、日本の地名に由来する「Mitaka」となっています。今回の「Liberty」バージョンでは、アクセス制御の詳細化、NFV用途等の大規模環境への対応、コンテナ管理機能リリース等が新規実装されています。※「Liberty」リリースの解説はこちら

3.Keynote

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Keynote では、OpenStackに関する重要トピックの共有として、以下のような内容が発表されました。

・OpenStack + コンテナ 組み合わせ活用事例

・日本での大規模導入事例(Yahoo! Japan、GMOインターネット、楽天、サイバーエージェント)

・Certified OpenStack Administrator (認定資格) の開始

・OpenStack Superuser Awards の発表(NTT Groupが受賞!)

・OpenStack プロジェクトの再整理 等

上記の中から、「プロジェクトの再整理」について少し深堀りして記載します。
OpenStackは、機能毎に「プロジェクト」として別々に開発が行われており、プロジェクトにはそれぞれかっこいい名前がついています。OpenStackを理解する際、まずプロジェクト名と、その提供機能範囲を覚える必要があります。例えば「Nova」はcompute上のVMを管理する最も基本的なプロジェクト、「Neutron」はネットワークを管理するプロジェクトになります。今回、プロジェクトについて以下の整理が実施されました。

・Core Services (どのような環境でも基本的に必要となるプロジェクト6個)とBig Tent(それ以外の、システム用途に応じて導入するプロジェクト)に分類

・プロジェクト毎に、商用システムでの導入割合、成熟度(5段階)、開発年数の情報を公開

Core Services

・Nova (Compute、利用率98%、成熟度5、5年)
・Neutron (Network、利用率79%、成熟度5、4年)
・Swift (Object Storage、利用率58%、成熟度4、5年)
・Cinder (Block Storage、利用率83%、成熟度5、4年)
・KeyStone (Identity、利用率95%、成熟度5、4年)
・Glance (Image Service、利用率92%、成熟度4、5年)

Big Tent (Core Services以外)

・Horizon (Dashboard、利用率90%、成熟度4、4年)
・Ceilometer (Telemetry、利用率43%、成熟度2、3年)
・Heat (Orchestration、利用率47%、成熟度4、3年)
・Trove (Database、利用率12%、成熟度1、2年)
・Sahara (Elastic Map Reduce、利用率7%、成熟度1、2年)
・Ironic (Bare-Metal Provisioning、利用率9%、成熟度2、2年)
・Zaqar (Messaging Service、利用率1%、成熟度1、2年)
・Designate (DNS Service、利用率9%、成熟度1、2年)
・Barbican (Key Management)、利用率9%、成熟度1、2年)
・上記の他、Manila (Shard File Systems)、Magnum(Containers)、Murano(Application catalog) 等多数のプロジェクトが存在

従来、「自分のシステムではどのプロジェクト(コンポーネント)を使うべきなのか?」、また「そのプロジェクトの開発成熟度はどのくらいなのか?使って大丈夫なのか?」等がやや分かりづらかったのですが、今回プロジェクトの位置づけが整理されたことにより、判断がしやすくなりました。

4.ディストリビューション動向

OpenStack は、オープンソース版(コミュニティ版)をそのまま使うことも可能ですが、ディストリビュータ各社から、独自の機能追加及びサポートを付与した、ディストリビューション版も提供されています。いくつかのディストリビューションについて、ブースの写真と共に、特色やトピックを紹介します。(記載はアルファベット順)

(1) Canonical (Ubuntu)

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Canonical社により、Ubuntu (LinuxOS 及びOpenStack)への有償サポートが提供されています。LinuxOSとしてのUbuntuはOpenStack開発環境のレファレンスOSとしても利用されており、その背景から多くの大規模ユーザにて導入されています。Canonical/Ubuntuのトピックとしては、従来のKVMに加え、さらに高集約な仮想環境を可能にするLXD(コンテナ技術)の推進や、Canonical社の既存のツール「Juju/MaaS」と連携し、OpenStackの導入、運用、さらにはアップグレードを自動化する「Autopilot」のリリース、OIL(Ubuntu OpenStack Interoperability Lab) による製品間の相互接続検証の充実化等が挙げられます。

(2) HP

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HP(2015/11/1以降は分社してHP Enterprise) は、「HP Helion」のブランドでOpenStackディストリビューション(ホストOSとしての独自LinuxOSも含む)を提供しています。通常版の 「Helion OpenStack」 の他、より信頼性・性能を高めた構成となる「Helion OpenStack Carrier Grade」、OpenStack自体に加えてサービス管理やワークフロー制御等の機能を組み合わせた「Helion CloudSystem」 といった製品があり、ユーザのニーズ、要件にあわせて選択可能です。

Summit直前に、自社運用していたパブリッククラウド「HP Cloud」の提供終了が発表 され、驚きがありましたが、OpenStackに対する取り組みとして、引き続きコミュニティに貢献していくとともに、プライベートクラウドの構築、運用に注力していくとのことです。実際、欧州のキャリア「Telefonica」等、具体的な大型案件も増えているようです。

(3) Mirantis

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Mirantis は「Pure Play」をキャッチフレーズにする、OpenStack 専業の企業であり、コミュニティへの貢献度(コードコントリビュート数)も高く、Expedia、NASA等多数の商用環境での利用実績があります。「Mirantis OpenStack」として、自社ディストリビューションを提供しており、デプロイ・運用管理をサポートするツール「FUEL」が特色です。他のディストリビューションと異なり、自社OSはありませんが、システム要件にあわせて適切なOSを選択する自由があります。

(4) Red Hat

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Red Hat では、「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHEL-OSP)」としてOpenStackディストリビューションを提供しています。OS(RedHat Enterprise Linux)、ハイパーバイザ(KVM)、OpenStackをシームレスに開発しており、それらを一括提供することで、統合性、安定性の高い製品となっています。また、RHEL(OS)は10年、RHEL-OSP(OpenStack)は3年の、長期間のライフサイクルサポートがあることも特徴です。また、RHEL-OSPには、配備・管理ツールである「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform Director」が付属しており、自動クラウドインストール、ベアメタルリソースの自動プロビジョニング等の機能により、運用担当者の作業負荷を軽減することが可能となっています。

(5) VMWare

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VMWareは、「VMWare Integrated OpenStack(VIO)」という名称でOpenStack ディストリビューションを提供しています。VMWare用のディストリビューションであるため、KVMには対応していないものの、vSphere、NSX、Virtual SANといった、同社製品との統合利用が簡単に行えるような設計となっています。例えば、VMWare製品の性能、多彩な機能、高可用性等のメリットを活かしつつ、OpenStackのAPIをシステム利用者向けに提供したい、というような利用シーンに適した製品となっています。

5.その他

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OpenStack Summit では、「Market Place」として、ディストリビュータ、SDNやストレージ等の関連製品ベンダ、コンサル/SI事業者等がブース出展する場が設けられており、今回は神社の縁日的な雰囲気となっていました。

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日本OpenStack ユーザ会としてもブース出展があり、日本のユーザ会の活動や会場(品川)周辺の観光情報等を紹介しました。少しだけ説明員としてお手伝いさせて頂き、ブースの前で足を止めた海外からの方に、手作りの「品川グルメマップ」を配布し、ラーメン等にチャレンジするようお勧めしました。

6.終わりに

国内での導入事例も増加し、また、コンテナ対応等の機能拡張も非常に速いスピードで行われており、OpenStackはますます勢いを増していることが感じられました。OpenStackコミュニティ及び業界の動向や開発状況について、引き続き確実に押さえて行きたいと思います。また、KDDIとしての取り組みについても別の機会にご紹介することができればと思います。

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KDDI株式会社 プラットフォーム開発本部
プラットフォーム技術部

松本 健太郎

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