2016.02.25

KDDI ChatWorkの誕生秘話。ユーザに寄添い「アソビ」をもたせる開発手法とは?

KDDI ChatWorkの誕生秘話。ユーザに寄添い「アソビ」をもたせる開発手法とは?

吉川元規KDDI 吉川です。本日は、KDDI ChatWorkとしてサービス協業していただいているChatWork 株式会社CEO 山本敏行氏(以下、敏行氏)とCTO山本正喜氏(以下、正喜氏)との対談記事を掲載します。3月1日で5周年を迎えられるChatWorkの歴史の中で、改めて「KDDIとの協業に至るこれまでの経緯と意義、またChatWorkのユニークな開発手法」についてお話しました。

KDDI×チャットワーク コラボストーリーは突然に

吉川元規
ChatWorkに協業のお声かけをさせていただいたのは、4年ほど前の事になりますね。次の時代はSNSやチャットの進化系が伸びるだろうという話で社内は盛り上がっており、その中でも先進性、先見性の優れたChatWork前身の会社と組めば、ビジネス市場においてメールではない新しいコミュニケーションプラットフォームを持つことができるのではないか、という強い想いから半ば強引に声をかけさせていただきました。ただ、社内はメール文化全盛で、次期サービスとして絶対的な自信を持ちつつも仕事でチャットによるコミュニケーションの時代が本当に来るのか・・・今だから言えますが、半信半疑の部分もありました。
山本正喜
チャットワークのサービスを開始したのが2011年3月で、その年の10月にKDDIからメールで問い合わせを頂いたのが最初でしたね。「KDDIから会いたいとメールが来たけど、目的は何だろう?」と社内がざわめいたぐらいです。その時に、KDDIとしてサービスを取扱いたいというご提案を頂きました。
山本敏行
リリースからわずか半年でKDDIのような大手企業から問い合わせが来るものかと。メールのあて先を間違えたのではないか、という感覚で驚きましたね。

対談2

山本正喜
商談という話でしたので、最初はOEMによるサービス提供かと思っていました。OEMでチャットワークの名称が隠れて別のサービス形態になりますと、世界に広げるプラットフォームを標榜していたことと矛盾しますし、競合を作ることになってしまいます。しかし、そうではなくChatWorkが前面に出たKDDI ChatWorkという名称で、かつチャットワークユーザとのやりとりができる相互乗り入れ可能なプラットフォームとして提供していくという提案でしたので、サービス提携に前のめりになりました。
山本敏行
大企業なのに中小企業級の勢いでいらっしゃって。我々がこれまでにお付き合いのある大企業とは異なる印象で、かなりアグレッシブでしたので驚きましたね。
吉川元規
ただそれからは社内の説得に少し時間を要しましたね。「SNSやチャットはビジネスに有用なのか」「ビジネスコミュニケーションのスタンダードはどのように変わっていくのか」など、社内からの数ある問いを正喜さんと二人三脚で一つ一つ関門を突破し、最初の商談から10ヶ月ほどを要しましたがおかげさまで、KDDI ChatWorkをリリースできました。お互いの熱意と粘り強さがなければ実現できなかったと今も思っています。

KDDIとChatWorkの協奏。KDDI ChatWorkならではのこだわり

吉川元規
一通りチャットワークの基本サービスを体験した後、これまでのKDDIサービスを作ってきた経験から大企業を想定した場合に必要な機能があったので、そこを重点的にディスカッションしましたよね。
山本正喜
チャットワークとしてコアな部分は同じでも、KDDIのメイン顧客である大規模層はセキュリティ面の要求が厳しいので、その部分で外せない要件をKDDI ChatWork向けとしてユーザ管理や外部とのコンテンツ連携の制限、ログ管理、ファイル送信・受信制限など顧客需要の高い機能は、別途開発をしました。

対談

山本敏行
また当社には、営業部署がありませんので、サービスの説明を依頼されても顧客を訪問するリソースがありません。加えて、セキュリティに関しても当社単独では皆様の信用を得ることがなかなか困難です。KDDIとのタイトな連携で、KDDI ChatWorkとしてサービス提供できることのメリットは非常に大きいと考えています。
吉川元規
ChatWorkとして、サービスを開発するにあたって、もっとも意識していること、重要なことは何だと考えていますか?
山本正喜
組織全体でユーザ目線を意識することです。顧客からのお問い合わせ、最もヘビーユーザである社内の意見、KDDIからのフィードバックなどを担当する事業部門がとりまとめ機能実装の優先付けを行っています。プロダクトとしてのビジョンは示していますが、細かい実装部分は現場のエンジニアに任せています。落とされた仕様をそのまま機械的に作るのではなく、ユーザ目線で機能の理想形を考え、個々の判断でコードに組み込む「アソビ」を持たせることで機能の個別最適化を図れます。UI/UXの印象を大きく左右する細部を現場に委ねつつ、全体として統一感の取れたプロダクトにまとめることが肝要です。チームあたり5,6人の少数編成で、そのリーダー同士がコミュニケーションしながら進めるコンパクトな組織連携がうまく機能していると思います。
吉川元規
エンジニアに「アソビ」を持たせるのは難しいことではないですか?

対談3

山本正喜
SI案件のように「決められた要件を確実に満たす」ということであれば、エンジニアの裁量に委ねるのはリスクがあります。しかし、チャットワークのような永続的に改善を繰り返すサービスは、顧客が喜ぶものが正解であり、内々で決めた仕様を満たすことが正解ではありません。ですので、エンジニアに裁量の余地を残すことが、機能向上に適しているのだと思います。また、「アソビ」を推奨する環境づくりも大事です。エンジニアをがんじがらめに管理するのは逆効果です。プロトタイピングを存分にできる環境を用意し、楽しみながらチャットワークを改造できる場をエンジニアに提供することで、彼らの柔軟な発想を引き出すことが可能になります。
吉川元規
開発ツールとスタイルは?ChatWorkならではのこだわりはありますか?
山本正喜
もっとも我が社らしいのは、開発の際のコミュニケーションツールにチャットワークを使用していることです。プロジェクト単位でグループチャットが可能で、簡単な依頼はチャットワークのタスク機能を利用しています。コード管理はGitHubのプライベートリポジトリ、バグなどのイシュー管理はAtlassian社のJIRA、ドキュメントなどのナレッジ管理は同社のConfluenceを使っています。CI(継続的インテグレーション)系としてTravisCI、CircleCIといったツールを組み合わせています。ステージング環境はAWS(アマゾンウェブサービス)です。開発ツール環境が整備されているので、ネット間でのコミュニケーションで開発は完結でき、明日から全員を在宅勤務となっても仕事は回ります。ただ、Face to Faceの意思疎通も大切にしたいですね。
山本敏行
現在、自由に働き方を選べる体制を整えている最中ですが、完全在宅勤務の社員もいます。しかし、Face to Faceで話す機会が一度もないと、意識にずれが生じ、チームとしてベクトルをあわせることが出来なくなるかもしれません。在宅の勤務の社員も月に1度は出社する案や、全員で2週間合宿に行く案など、社員全員がコミュニケーション機会を持てるように、働き方の最適なバランスを思考錯誤している段階です。

対談4

吉川元規
ChatWorkにて実践しているアジャイル開発スタイルを現在、KDDIも導入しています。チャットワークは短いスパンで開発をしていますが、KDDIはもともとインフラ事業の会社なので、比較的長いスパンの開発が多く、ウォーターフォール型の手法がメインでした。先駆的なChatWorkから刺激を受けつつ、社内での企画・開発にアジャイルでの経験を生かしています。

広がる、加速するChatWork

吉川元規
今後のChatWorkの展望はいかがですか?KDDI ChatWorkはおかげさまで契約社数が1600社を超え、これまでは基盤固めが中心でしたが、今後はモバイルアプリの高機能化や大企業向けの機能拡充など、開発を加速させていきたいですね。
山本敏行
2010年にチャットワークを作り出すときから「世界で通用する製品を」という思いで開発を続けてきました。それまでITサービスの分野では日本発で世界に通用するようなサービスは生まれてきませんでした。当社は10期増収・増益で別の主力製品もありましたが、日本発のサービスを生み出すために敢えてチャットワークに絞る経営判断をしました。2011年3月にリリースし、並行して英語化を進め、6月には海外でプレゼンをしました。チャット主体のコミュニケーションプラットフォームは当時のシリコンバレーでも新しすぎたようで反応としては芳しくありませんでした。今では時代が追いついたようで、高い評価を受けています。世間で競合と言われているものも続々と現れていますが、ほとんどがテキスト中心で各種SNSとの連携が充実しているという技術者向けのものです。対してチャットワークはビジネスにおいて社内外で活用でき、技術者でなくても利用しやすいことが最大の特徴です。モバイル分野をより充実させ、グローバル市場でのデ・ファクトプラットフォームを目指します。
山本正喜
欧米市場ではUI/UXの完成が日本と異なりますので苦労もありますが、良い手ごたえを掴みつつあります。とはいえ、私としてはチャットワークで実現したいことの1割もできていません。チャットワークをビジネスコミュニケーションのプラットフォームとするためにアイデアがいくらでも湧き出てきますので、速いサイクルでサービスを進化させていきたいと思っています。

吉川元規
本日はお忙しいところお時間頂きありがとうございました。KDDI ×ChatWorkでお客様に喜んで頂けるサービスを提供していただけるよう、これからも宜しくお願いします。

 

◆ChatWork株式会社 代表取締役 CEO 山本 敏行氏プロフィール
1979年3月21日大阪府寝屋川市生まれ。
中央大学商学部在学中の2000年、留学先のロサンゼルスにて中小企業のIT化を支援する株式会社EC studioを創業し、2004年法人化。2011年にクラウド型のビジネスチャットツール「チャットワーク」サービスを開始。
2012年に社名をChatWork株式会社に変更し、米国法人をシリコンバレーに設立。自身も拠点をシリコンバレーに移し、日夜マーケティング活動に奔走している。

◆ChatWork株式会社 専務取締役 CTO 山本 正喜氏プロフィール
1980年生まれ。電気通信大学情報工学科卒業。
大学在学中より兄の山本敏行とともに、兄弟で株式会社EC studioを2000年に創業。以来、製品開発担当として多数のサービス開発に携わり、2011年3月にクラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」を開発。2012年には社名をChatWork株式会社へと変更し、チャットワークをビジネスコミュニケーションにおける世界のスタンダードにすべく、全社を挙げて取り組んでいる。

 

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KDDI株式会社 ソリューション事業企画本部
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